滋賀・朝宮茶摘み荒茶製茶研修会 

2002年6月16日開催 朝宮地区茶畑・北田与志照製茶工場

滋賀県には何カ所かお茶の産地があります。その中で、山間で栽培され、高級茶産地として
知られる甲賀郡信楽町朝宮の茶畑と製茶工場に行ってきました。
日本茶インストラクター協会の滋賀県支部主催なので、
関西のインストラクターがたくさん集まっています。


今回の研修は、
 ・製茶工場見学
 ・茶畑で手摘みと機械刈り見学
 ・朝宮地区の茶畑を何カ所か見学
 ・緑茶の鑑定研修
と、実に盛りだくさん。

製茶工場の見学が終わって、茶畑へ移動。工場からずいぶん長く車で移動し、山をどんどん上っていきます。秘境へ行くよう。たどり着くと、見上げる小高い丘の上の方に茶畑があります。結構な急斜面をみんなで上る。
こんな急な面でも軽トラで上り下りするそうです。頂上は見晴らしがよく、清々しい気分になります。標高400mぐらいの高さ。


   

茶摘み研修の茶畑から眺める
茶摘みが終わって、帰りの坂道で滑り落ちそうになりました
二番茶手摘み実習


左がすっかり大きく育った一番茶の遅れ芽。
右のかわいらしい芽が、二番茶の新芽。







  茶葉を摘み取る時期は、年に3〜4回あります。
一番茶・4月中旬〜5月中旬
二番茶・6月下旬〜7月上旬
三番茶・8月上旬〜下旬
四番茶・9月下旬
大まかに言うと、このぐらいの時期に分けられます。ただし、地域や気候によって時期が前後しますし、場所によっては、三番茶や四番茶の摘み取りが無いところもあります。

今まで一番茶の新茶畑の様子しか見たことがなかったので、二番茶の様子は新鮮でした。一番印象に残ったのは、一番茶の遅れ芽。一番茶の摘み取り時期に、摘まれずに残った芽が生長したものです。かわいらしい芽に見慣れていたので、大きくたくましく感じました。
茶摘みに提供してもらった茶畑の茶の品種は「やまかい」。葉を見ただけでは、「やぶきた」と区別がつきませんでした。




機械摘み 前


機械摘み 後ろ
  茶摘みを始めると、虫がたくさん寄ってきます。そう言えば、今まで茶畑で虫はあまり見なかったなあ。小さいハチや足の長い虫が飛んでいたり、茶色い小さなカマキリ、葉の裏には赤い小さな虫がいっぱい、とたくさん虫に出会いました。

虫と戯れながら手摘みをしている傍らで、機械による摘み取り実演が始まりました。斜面にあるような茶畑では、大型の乗用機械は使えないので、このような二人で手で持って移動しながら刈り取る機械が使われます。刈り取る刃の面が低すぎると古葉まで刈ってしまいますし、高すぎると新芽が刈れません。均一に刈るにはかなり経験が必要そうです。刈り取った葉は、風で送られてうしろに付けられた白い袋に貯められます。


茶摘み休憩時に配られたのが、茶葉入りあん餅。それほどお茶味はしませんでしたが、塩味とあんこの甘さが合わさって、よいお味に。産地でもらうお茶入りお菓子はどれもおいしいねえ。

奥山での茶摘みが終わって、他の場所、寺谷や向山の茶園へ移動して、それぞれの茶畑を見学しました。

寺谷では、片木明さんご自慢の無農薬栽培の茶畑を見せて頂きました。先ほどの虫たくさんの茶畑で、害虫と天敵の虫の説明をすらすらとしていた方でした。なるほど。

 
茶葉入りあん餅

無農薬栽培の茶畑

 

無農薬で栽培し、肥料も油かすなどを利用。良い土になっているおかげで、ミミズもたくさんいる様子。そんなおいしいエサの油かすやミミズをイノシシが食べにくるそうです。防霜ファンがあるおかげで、鉄砲を撃つこともできず、イノシシにとっては良い条件。害虫だけでなく、イノシシにも苦労しているようです。また、地域によっては、新芽を山のシカが食べることもあるとか。




手前は摘採面を刈り込んだ状態。
伸ばしっぱなしだと枝が細くなり、
葉も小型化するので、
適度な時期に刈り込んで更新する。
 
手前が生産性のある茶の木。
奥は成育中の茶の木。
収穫ができるようになるのは4年目ごろから。



緑茶の鑑定研修

・製茶工程ごとのサンプル
蒸し・粗揉・揉捻・中揉・精揉と順を追って、それぞれの茶葉を取り出して、形状を観察したり、審査茶碗で浸出して、味や香りを確かめます。
製茶し終わった茶葉を鑑定することはあっても、製茶途中の状態をみることは無かったので、とても興味がありました。蒸しの段階では、味も香りもほとんど葉っぱそのもので、揉み込まれていくほどに、お茶らしくなっていきます。揉捻になると、かなりお茶らしい味や香りでした。お茶は何度も揉み込まれていきますが、ココ、という揉み込み加減を決めたのはいつ頃で、なぜその段階で良い茶、としたのかが、鑑定をしているうちに、気になりました。



  ・品種や茶期別の茶
「宇治玉露」 「宇治かぶせ」
「朝宮一茶・ヤブキタ」
「朝宮一茶・アサツユ」
「朝宮二茶・ヤマカイ」
「朝宮刈り下・親子番茶」
を鑑定しました。玉露・かぶせ・ヤブキタは、一般的によく味わう、おなじみの味です。アサツユは、土っぽい香り、ヤマカイは、ビニル系のにおいがしました。アサツユとヤマカイはかなり違いがあるので、それぞれ個性的な茶と言えるでしょう。今回、私が気になったのは、親子番茶です。番茶、と聞いて、一般的な下級クラスの茶葉である「番茶」の味を想像したのですが、花っぽい香りがして、買って帰りたいな、と思いました。同行したインストラクター友人・茶壺も同じ感想でした。
お土産に、「やぶきた一番茶」と今回茶摘みをした「やまかい二番茶」をもらいました。朝宮のやぶきたのお茶は、シャープな青みのある香りや味があまり無く、マイルドな味わいでした。以前、初めて飲んだ朝宮のお茶もそのような印象でした。その初めての朝宮茶、家に帰ってみて気づいたのですが、実は、片木さんが作った無農薬・無化学肥料栽培のお茶でした。世間は狭いですね。そのお茶を作った人に会っていたなんて。




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